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豪森林火災の被害拡大 首相訪日も延期 - 日本経済新聞

【シドニー=松本史】オーストラリアで森林火災の被害が拡大している。2019年7月以降、東京都の20倍以上の面積が燃え、ブラジルのアマゾン火災を超える規模の被害となった。背景には記録的な高温や干ばつがあり、事態の深刻化を受けてモリソン首相は日本やインドへの訪問を延期した。ただ、対応の遅れや温暖化問題への姿勢で批判を浴びており、政権の求心力低下を招く可能性もある。

NSW州だけで東京の15倍の面積の森林が燃えた=AAP

NSW州だけで東京の15倍の面積の森林が燃えた=AAP

豪南東部は昨年12月30日から広がった火災の被害が深刻化し少なくとも10人が死亡。海軍艦が3日から救助活動に当たった。モリソン首相は4日、救助活動のため軍の予備隊3千人を招集したと発表。1月中旬に予定していた日本とインドへの訪問も延期すると明らかにした。

被害が大きい東部ニューサウスウェールズ(NSW)州消防によると、19年7月から同州だけで計3万6千平方キロメートルが焼けた。ロイター通信は豪東部3州で5万2千平方キロメートルが燃えたと報じている。これは東京都の20倍以上の面積にあたり、19年7月までの1年間に消失したブラジルのアマゾン熱帯雨林の面積(約9700平方キロメートル)も大きく上回る。

豪州の森林火災は南半球が夏を迎える12月ごろに多く発生する。ただ、昨年は9月から火災が発生、11月に深刻化した。森林火災の原因となっているのが、高温と乾燥だ。豪気象庁によると豪州の春に当たる9~11月、豪全土の平均降水量は27ミリと観測史上最低を記録し、平均気温は史上5番目の高さとなった。12月に入り気温はさらに上昇し、18日は最高気温の全国平均が41.9度と観測史上最高を記録した。

被害が拡大する中、対応の遅れが目立ったモリソン首相への批判が強まっている。「もっと支援が必要だ」。1月初旬、NSW州で森林火災の被害を視察したモリソン首相に、被災者の女性はいらだちをあらわにした。

モリソン首相は12月中旬から家族と共に休暇でハワイを訪れたが、当初は休暇を公表しなかった。火災の被害拡大とともに批判が高まり、休暇を切り上げ帰国した。

森林火災の遠因とも言われる気候変動対策への姿勢への反発も広がる。「我々は無謀で雇用を奪い、経済を破壊する目標には向き合わない」。モリソン首相は昨年12月下旬、豪テレビ番組で強調したが、多くの二酸化炭素の排出につながる石炭産業を擁護する姿勢に批判が強まった。

オーストラリア国立大のアンドリュー・ヒューズ講師は「被災者らは救援物資など連邦政府の調整と支援を期待していたが、首相の対応が遅れ不満を募らせている」と指摘する。豪紙オーストラリアンによると、対米協調を掲げて昨年5月の総選挙で勝利した与党・保守連合(自由党と国民党)の支持率は12月上旬時点で52%で、対中融和的とされる労働党の48%を上回る。ただ、森林火災問題でさらに批判が強まれば、モリソン首相の政権運営が不安定化する可能性がある。

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January 06, 2020 at 03:33PM
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