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【衝撃画像】オーストラリア森林火災に巻き込まれ、奇跡の脱出果たした記者の年末年始「全記録」 - Business Insider Japan

旅の最初の目的地はニューサウスウェールズ州のエデン。

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美しきエデンの海。

Rosie Perper/Business Insider

上は12月27日に撮影した写真。青い空、澄み切った空気。危険の兆しはどこにもなかった。事前にダウンロードした災害情報アプリは、森林火災は遠くの話で、旅の計画には何の影響もないことを教えてくれていた。

しかし、森林火災はときどき予想外の動きを見せる。天候次第で延焼するルートは急に変わることもある。

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「火災積乱雲」により森林火災が深刻化する仕組み。

Bureau of Meteorology, Victoria

2019年10月に始まった今季の森林火災は、史上最悪の被害をもたらしている。一部のエリアでは温度上昇と乾燥が続き、最高気温は史上記録を更新し、火災を深刻化させている。あまりに巨大な火災が積乱雲をつくり出し、それが雷を誘発することでさらなる火災が起きている。

エデンのすぐ北にある浜辺の町ナルーマに車で向かい、そこで3日間キャンプを張った。12月30日、現地時間で17時ごろ、不吉な警告がキャンプサイト周辺に現れはじめた。

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キャンプサイトのシャワールームに貼り出された注意書き。

Rosie Perper/Business Insider

ナルーマのキャンプサイトに着いて、上の(火災の危険性を知らせる)張り紙を読んだのは20時ごろ。すでに暗くなりかけていたので、翌日朝一番で避難するのが安全だろうという話に。

朝5時にアラームをセットし、起きたらすぐにメルボルンまで戻ることに決まり、不安を感じながらも眠りについた。でも、翌日からの避難計画には自信をもっていた。

朝5時、外にはもう煙が立ち込めていた。

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私たちは誰よりも先に起きた。それでも手遅れだった。

Rosie Perper/Business Insider

当時火災が起きていたのは80キロ北のベガバレーあたりだったのに、風向きのせいで、火の手はあっという間に私たちがキャンプしていたナルーマの北側すぐのところにまで延びてきた。

急いでキャンプ用具を片づけて車に飛び乗り、できるだけ南へ移動しようとアクセルを踏んだ。予報はこれから状況が悪化することを告げていた。

5分ほど走ったところで男性に止められた。南下するルートはすでに通行止めになっていて、これ以上進めないという。

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Rosie Perper/Business Insider

すぐに来た道を引き返した。現地時間の6時30分ごろにはナルーマから出るルートはすべて封鎖された。空はだんだん暗くなり、少しだけ見えていた太陽もすっかり覆い尽くされた。

ナルーマの町に引き返すと、対向車線の渋滞が見えてきた。そして私たちのすぐ後ろにも車の列が。

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Rosie Perper/Business Insider

観光客が集まるエリアに入ると、避難所を探したほうがいいと言われた。市街や近隣の農村からたくさんの人たちが海岸沿いに逃げてきていた。

ナルーマのスポーツ・レジャーセンターに開設された避難所に入れてもらえた。

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避難所の内部。

Maddy Ashbolt/Business Insider

運営していたのはオーストラリア赤十字(ARC)。朝からたくさんの人が詰めかけていた。数百人の小さな子どもたち、それに飼い犬も50匹以上避難していた。

90歳は越えていると思われる車椅子のおばあちゃんと出会った。介護をしてくれている息子さんと一緒に、近所の町から逃げてきたという。犬は何匹か連れてきたけれど、農場の家畜は残してくるしかなかったそうだ。

あとで知ったことだが、彼女らの町は焼け野原になってしまった。家財を守ろうと残った2人が死亡したという。

避難所に登録を済ませたあと、町に1つだけしかないスーパーで食料などを買い出し。

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Rosie Perper/Business Insider

スーパーに到着したのは朝7時30分。

パンや牛乳のような必需品はほとんど売り切れ。

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Rosie Perper/Business Insider

スーパーと同じく、ナルーマに1つしかない薬局でも、ガスマスクや懐中電灯、薬品などの非常用品は数時間で売り切れた。

外に出ると、煙が頭上近くまで降りてくるところだった。

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Rosie Perper/Business Insider

日光は完全に遮られた。

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Rosie Perper/Business Insider

もはや何時なのかわからない状態。電気もスマホも使えず、(向こうに炎の輝きは見えても)空は暗い。文字どおりブラックアウト。

空の色はグレーから……

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Rosie Perper/Business Insider

くすんだオレンジ色へと変わり……

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Rosie Perper/Business Insider

やけに心落ち着かなくなる紫色へ……

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Rosie Perper/Business Insider

ついには、血のような真っ赤な空に。炎がじわりじわりと押し寄せてくる。

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Maddy Ashbolt/Business Insider

午後にはレジャーセンターがいっぱいになり、通りをはさんで向かい側にあるビーチクラブに第2避難所が開設された。

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Rosie Perper/Business Insider

私たちはテーブルを囲んでカードゲームをして過ごした。避難所のなかは真っ暗でほとんど何も見えなかったけれど。

友人のマッディと車の中へ。ラジオで火災の最新情報を拾ってみることに。

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Maddy Ashbolt/Business Insider

キャンプで使ったふきんをマスク代わりに。あんまりかわいくないけど、外の空気を直接吸い込むと、肺に熱い針が刺さったような痛みを感じるので、仕方ない。

不安が襲ってきた。閉じ込められたような気がした。

突然温度が下がり、雨が降り出した。

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Maddy Ashbolt/Business Insider

しかし、雨はすぐに灰に変わり、車体や人肌は煤(すす)で覆われた。熱い煙と冷たい風が交互にやってきて、震えを感じた。

空気が悪くなったので、避難してきた人たちはみんな屋内に。通りは薄気味悪い静けさに包まれた。

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Rosie Perper/Business Insider

地元の人たちから、「ナルーマ」という町の名前は、先住民アボリジニの「青く澄んだ海」を意味する言葉に由来すると聞いた。

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Maddy Ashbolt/Business Insider

でも、この日の海は濁り、燃えさかる炎の赤を映しだしていた。

未来は全然見えてこないのに、みんな明るく過ごしていたことにジーンときた。

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Rosie Perper/Business Insider

上の写真は、テントを張って音楽を鳴らしていた人たち。ビールでもどう?と誘われたけど、心の中で感謝しつつ、丁重にお断りした。

外に出てはしゃぐ子どもたち。無邪気な笑い声が不吉な静けさを切り裂く。

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Rosie Perper/Business Insider

誰かがミラーボールを木に吊り下げた。狂乱の1日を過ごすうち、大晦日だったことをすっかり忘れていた。

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Rosie Perper/Business Insider

灰色の空を背景にギラギラとした光を放つミラーボール。もはや現実世界のこととは思えなかった。

避難所からすぐのところにDJブースが設置されていた。わけがわからなくなった。

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地元の消防団(Rural Fire Service)が用意したDJブース。

Rosie Perper/Business Insider

ブースを設置したのは、地元の人たちがボランティアベースでやっている消防団だった。DJを買って出た団員は、Facebookにこんなことを書いていた。

「避難所を運営している人たちに言って、みんなを元気にするパーティーをやらないか、って持ちかけたんだ。そしたら『協力するよ、ぜひ盛り上がるところを見てみたいね』だって。感動したね」

「家族や小さな子どもたちが集まってきて、楽しんだら少し気が楽になったみたいだった。みんながつながって、素晴らしかったよ」

私たちはモーテルの部屋の床に寝転がって一晩を過ごした。

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Rosie Perper/Business Insider

いつでも逃げられるように必要な荷物をまとめてから横になった。夜が終わらないような気がして、数時間寝られたかどうか。

翌日の気候条件次第ではナルーマを出られる可能性もあったが、期待はまったく裏切られた。数日は身動きが取れないだろうという話がどこからか聞こえてきた。

2020年1月1日、朝9時30分。州政府当局は住民向けのブリーフィングを行い、町の外へ続く通行止め1カ所を解除したことを明らかに。

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Rosie Perper/Business Insider

西のクーマに至る約200キロの道路は安全に通行可能で、クーマからさらに首都キャンベラに向かえば、空港もあるし、シドニーやメルボルンに向かうハイウェイもあるという。

しかし、不安な要素は残っていた。ナルーマやその周辺のガソリンスタンドは(停電で油槽からの電動ポンプが使えないために)すべて休業だそうで、クーマまでたどり着くには燃料満タンでナルーマを出ないと、森林火災の延焼ルートにつかまる可能性があった。

それでも、ナルーマを脱出したいという衝動のほうが勝った。数百人が車に荷を積んで、町をあとにしていった。

車にガソリンが半分しか入っていなかった私たちは、不安を抱えつつも、町を脱出する車の列に続いた。

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Rosie Perper/Business Insider

空はピンク色で、遠くのほうで炎が揺らめくのが見えた。

私たちは本当に幸運だった。ナルーマの南85キロほどにあるタスラの町で、偶然にも小さな給油所を見つけ、そこで燃料を満タンにして旅を続けることができたのだ。笑顔で送り出してくれたオーナーさんは、私たちの命を救ったことなど気づいてもいないようだった。

クーマまでのハイウェイは数キロ先の火災で煙にすっぽり包まれていた。

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Rosie Perper/Business Insider

山道(スノーウィーマウンテンズ・ハイウェー)の視界は100メートルもなかった。火災はさらに危険な広がりを見せると予測されていたため、行く先が通行止めになる可能性もあった。

ナルーマからクーマまで4時間で到着。

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Rosie Perper/Business Insider

クーマのマクドナルドには少なくとも100人のお客さんがいた。私たちも軽く食べて、すぐにキャンベラに向かった。状況が悪くなる前に、とにかくたどり着きたかったのだ。

キャンベラ到着はちょうど16時……疲れ果てた。

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Rosie Perper/Business Insider

森林火災の煙は風に運ばれて首都キャンベラにも届いていた。空気は熱かった。オーストラリア放送協会(ABC)によると、1月1日のキャンベラでは、大気汚染の程度を示す空気質指数(AQI)が「危険」レベルの23倍にも達したという。

最短で乗れる便でメルボルンへ。搭乗ゲートで涙があふれ出た。

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Rosie Perper/Business Insider

それまで体験した事実の重さに押しつぶされそうだった。サウスコーストから避難できないでいる人、逃げても行く先のない人たちのことを考えると、胸が張り裂けそうだった。

飛行機の上からも立ちのぼる煙が見えた。

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Rosie Perper/Business Insider

メルボルンに着いたのは現地時間で1月1日の21時ごろ。人生で最も長い2日間だったと思う。4人の友人たちからは家に着いたとほどなく連絡があった。メルボルンの平和は奇跡のように感じられた。

しかし、オーストラリアではいまだに異常な状態が続いている。そして、これが普通の状態になっては困る。

オーストラリアでは夏に(気温の高い年は春も)森林火災が起きるのは珍しいことではない。ただ、気候変動の影響により火災の起きる時期が年々前倒しになり、激甚化が進んでいると指摘する科学者もいる。

私の2020年はこうして予想もしない形で幕を開けた。

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Rosie Perper/Business Insider

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January 09, 2020 at 02:50AM
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