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大森林火災“コアラの楽園”は今 焼け野原の島で見たもの - www.fnn.jp

オーストラリアの南に位置する「カンガルー島」。

今から120年ほど前に発見されたときに、たくさんのカンガルーがいたことからこの名が付いた。

でも、生息するのはそれだけではない。

珍獣と呼ばれるハリモグラや、ターコイズ色に広がる美しい海のそばではアシカの姿も。

特にコアラは、絶滅の危機にあったとき、保護と繁殖のためにカンガルー島に移され、森林火災の前には5万匹がいたといわれている。

しかし2020年1月、この島を悲劇が襲った。

消防車が進んでいるのは、一面、炎の世界。

東京都と同じ程の面積、国立公園が広がる島のほぼ西半部分を焼き尽くした大森林火災。

野生動物たちも犠牲に。

中でもコアラは、5万匹のうち、3万匹が死んだともいわれている。

大規模火災から2カ月。

はたして、森の動物たちは今どうしているのだろうか。

島の東側から西へ2時間ほど走ると、風景が変わりはじめる。

焼け焦げた木が目立ってきた。

かつての楽園の無残な姿...。

緑の森は、灰色の大地に姿を変えていました。

なぜ、今回の火災は、これほど大規模になったのだろうか。

そこには、ある気象現象が影響していた。

「ダイポールモード現象」。

普段は、インド洋の東側にある温かい海水が雲を発達させ、オーストラリアに雨を降らせる。

ダイポールモード現象とは、この海水が西へ移動すること。

その結果、インド洋東部では、海水温が下がり、雨雲が発達せず、空気はカラカラになる。

さらに、地球温暖化で異常な高温が続いていたことが重なり、大規模な森林火災が起きる条件がそろってしまったという。

オーストラリア各地で発生した大火災では、推定で10億匹もの野生動物が犠牲になった。

焼け跡には、いまだ助けを求める動物も。

そうした動物をボランティアで保護する人たちがいる。

ジェラードさんもそんな1人。

家にあげてもらうと、なんと出てきたのは、カンガルーの赤ちゃん。

つい2~3週間前に一家で保護した。

1歳程度だということで、まだミルクが欠かせない。

人なつっこくおっとりした性格で、足にはかわいらしい色違いの靴下も。

よく似合っている。

でも、ジェラードさんによれば、実は...。

ジェラードさん「足にひどいやけどをしているんだ」

両足に巻かれているのは、靴下ではなく包帯。

やけどがひどく、家から出ることはできない。

今後、足を切断する可能性もあるという。

野生で暮らしていけない動物を保護している一般家庭は少なくない。

しかし、傷ついたコアラたちは、ある特別な施設に集められていた。

そこで出会ったのは、さまざまな表情を見せるコアラたち。

そして、傷ついた赤ちゃんコアラを見守るスタッフの姿だった。

カンガルー島の大森林火災で、傷ついたコアラたちが治療を受けている自然動物園「ワイルドライフパーク」。

一般に開放されているエリアには、火災から逃れることができたコアラの姿が。

ユーカリの葉をムシャムシャ食べるコアラ、眠りこけるコアラ。

さらには、自由に歩き回るコアラまで。

さまざまな表情のコアラを見ることができる。

しかし、パーク内を奥へと進むと...。

保護区域では、火災から2カ月が経過してもなお、600匹のコアラが暮らしていた。

木に捕まって過ごしているコアラたち。

しかし、パークで自由に過ごしているものに比べると、心なしか元気がなさそう。

室内エリアには、治療中の赤ちゃんがいた。

抱っこが大好きだというが、このエリアにいるのは皆、火災で親を失った子どもたちだという。

スタッフ「本来なら母親の背中に乗っている年頃なのよ。でも見つかったときに母親はいなかった。おそらく死んでしまったのね」

足を見せてもらうと、やけどの痕が。

命は取り留めたものの、それぞれが厳しい運命を背負っている。

取材中、1匹のコアラが運び込まれてきた。

数日前に救助され、治療を受けるのだという。

そこには、痛々しい姿が。

獣医師「目の周りと鼻の周りにやけどがあるわね。この指が心配。ひどくやけどしている」

指を失うと、木に登りユーカリの葉を食べることができず、死んでしまう。

やけどを負った指に、丁寧に薬を塗っていく。

それでも回復が見込めないコアラには、安楽死を施すこともあるという。

獣医師「決して慣れるものではないわ。でも彼らの苦しみを考えるとね...」

死と直面する毎日。

それでも、うれしい出来事もある。

この日、スタッフが1匹のコアラの元へと向かった。

スタッフ「これからコアラを1匹、自然に戻すんだ。治療が無事、終わったからね」

元気になったコアラを自然に帰すときが来た。

向かったのは、奇跡的に火災を逃れたユーカリの森。

スタッフ「これが最高の瞬間なんだ。これまでの治療の集大成だからね」

はたして、自然に戻ってくれるだろうか。

ケージを開けた次の瞬間。

待ちかねたように飛び出したコアラは、木のてっぺんまで登って行った。

一方で、自力では自然で暮らせないコアラを探し出し、保護する団体も。

動物レスキューのスペシャリスト・世界動物保護機構「Humane Society International」。

この日も焼けてしまった森を訪れていた。

メンバー「見つけた! すぐ近くにいたわね!」

そこには、1本の木にしがみつくコアラの姿が。

一見、葉は茂っているようだが、よく見ると葉のほとんどが茶色く枯れている。

空から見てみると一目瞭然。

新鮮な緑の葉は、わずかしか残されていない。

コアラは、1日1kgのユーカリを食べるが、このままでは飢え死にしてしまう。

メンバー「この一帯は食料になる葉がないので、あの子を保護します」

見渡す限り続く、枯れ果てたユーカリの森。

実はその森に、今変化が訪れはじめているという。

大森林火災のさなか、火の海を進んでいた消防士たちが変化が起きているという場所へと連れて行ってくれた。

それは...。

消防士「この辺りは真っ黒に焼けてしまったんだけど、草が生え始めているんだ。木が再生しているのもわかるだろう。葉っぱが生え始めている」

荒れ果てた大地に、再び緑が戻り始めていた。

さらに...。

消防士「あれが見えるかい? コアラが自然に戻ってきている」

近くには、元気なコアラの姿も。

異常気象がもたらしたオーストラリアの大森林火災。

それでも、森を焼き尽くした自然の猛威は、元通りになろうとする大きな力も見せていた。

再びコアラの楽園へ。

人間の努力、動物たちの生命力の闘いはこれからも続く。

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March 20, 2020 at 06:00PM
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