- アレルクリーンプラス
- N-WGN
- N-BOX
お客様の生活を豊かにするクルマやバイクを作りたい。その思いから生まれた技術は、意外な場所で活躍することも。現行モデルのN-BOXに採用されているシートの表皮素材が、オフィス家具の大手メーカーである内田洋行さんのオフィスチェアに採用されました。今回は、その素材「アレルクリーンプラス」の生みの親である林里恵さんと、技術供与を提案した森隆将さんにお話を聞きました!
1. N-WGNやN-BOXのシート素材がオフィス家具に採用されました
Hondaが販売する軽自動車のN-WGN(エヌワゴン)とN-BOX(エヌボックス)。プラットフォームを共用するなど兄弟のような両者ですが、シートの表皮素材も同じものを使っていることはご存知でしょうか。その素材の名はアレルクリーンプラス。抗アレル物質・抗ウイルスの機能を持つこの素材が、なんとオフィス家具大手の内田洋行さんの椅子に使われることになりました!
「アレルクリーンプラス」が使われているN-BOXのシート(左)
「アレルクリーンプラス」が使われている内田洋行さんの「Elfie」(右)
2. アレルクリーンプラスとは?
今回内田洋行さんの椅子に使われるアレルクリーンプラス。クルマを飛び出してオフィス家具に使われる理由は、その優れた機能にありました。
加工剤を施した布地(アレルクリーンプラス)によって、
ウイルスやアレル物質のたんぱく質が不活性化される
図のように、アレルクリーンプラスには抗アレル物質剤と抗ウイルス剤といった加工剤が含まれています。これらの加工剤が、スギ花粉やダニの死骸などのアレル物質や、インフルエンザなどのウイルスを不活性化します。そんなアレルクリーンプラスの性能が、オフィスチェア採用の決め手になりました。
働き方改革やテレワークの普及により、フリーアドレスやシェアオフィスが増加。テーブルやチェアを他の人と共用することが増えています。そして2012年より企業の働き方変革のコンサルティングを開始してきた大手家具メーカーの内田洋行さんは、自席だけではなく様々な場所で仕事をするワークスタイルへのニーズが高まっている中で、チェアに適した安心・安全な機能を実現する抗ウイルス素材を模索されていました。
そんな中、Hondaのアレルクリーンプラスを知って頂く機会がありました。オフィスチェアとしての厳しい審査を経て技術が認められ、正式にオフィスチェアへの採用が決定。思わぬ形の異業種交流となりました。
…ですが、そこまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
アレルクリーンプラスの開発チームはもちろん、その技術を社外に紹介する部署も含め、多くの人の奮闘がありました。
その中でもひときわ大きな役割を果たした二人の立役者に、今回お話を聞くことができました。アレルクリーンプラスの開発責任者である、完成車開発統括部の林里恵さん。そしてその技術を社外に紹介し、活用頂くまでにこぎつけた四輪事業知的財産部の森隆将さんです。
3. アレルクリーンプラスは「リベンジ」
――林さん、森さん。本日はお忙しいところありがとうございます。まずは林さんに聞きたいのですが、アレルクリーンプラス開発のきっかけはなんだったのでしょうか。
林「『プラス』と付いていることから分かる通り、アレルクリーンプラスはいわば2代目にあたります。
最初に開発したのは初代『アレルクリーン』。こちらは抗アレル物質機能だけを持った素材で、初代N-BOXなどのシートに使われていました」
――抗ウイルス機能はまだなかったのですね。
林「はい。当時はそれでも業界に先駆けた機能だったのですが、実は完成間近に他メーカーさんに先を越されてしまって。どうにかしてそのリベンジを果たしたい! 世界中どこの自動車メーカーもまだ作ったことのないシート素材で、お客様のカーライフを支えたい! という意地のような気持ちが、今思えばアレルクリーンプラス開発の大きな動機でした(笑)。抗アレル物質に加えて、抗ウイルスという機能を付加したアレルクリーンプラスを世に出したことで、このリベンジは果たすことができました」
――新機能として「抗ウイルス」を選んだのはなぜですか?
林「『アレルゲン』とも呼ばれるアレル物質とは、主に花粉やダニの糞と死骸のこと。日本で多いスギ花粉はだいたい2月から4月、ダニは6月から9月がピークだといわれています。一方でインフルエンザウイルスA型などは11月から2月頃がピークだといわれており、お客様の関心も高いと感じていました。
この季節にも活躍できれば、ほぼ1年中クルマに乗るさまざまな方の役に立つシート素材になると思い、抗ウイルスの機能を追加したいと考えました」
4. 200回以上のテストを経て完成した素材
――アレルクリーンプラス開発の際に大変だったことはなんですか?
林「色々ありましたが…。一番はそれぞれの『剤』のベストな組み合わせ、含有量を模索することでしたね。抗アレル物質の剤や抗ウイルス剤などの『剤』をそれぞれ選ぶのですが、どれをどの程度使えばいいのかは完全に手探り状態。クルマのシートに使うものですから、光や熱に弱かったり、色がついていたりするものは使えないという制約もありました。さらにその『剤』と生地を組み合わせるバインダー剤の配合を考える必要もあり、生地に薬剤を漬け込むディッピングという手法にも工夫が必要で…。この辺にしておきましょうか(笑)」
――とにかく選択肢が多かったということは伝わります…。
林「その膨大な選択肢の中から、『これでどうだ』『これならどうだ』とあたりをつけてテストにかけます。1回で1カ月くらいかかるのですが、完成までに200回以上テストしましたね」
――200回も!
林「もちろん、いくつものテストを並行していましたが、もうしらみつぶしの作業ですね。ベストな剤とその量の組み合わせを見つけるのには、1年半がかかりました」
――その大変な苦労の果てに完成したアレルクリーンプラス。
今販売されているN-WGNやN-BOXのシートに搭載されています。
林「N-WGNやN-BOXの担当チームに評価してもらったのはとても嬉しかったです。どちらもお子さんが乗る場面が多いクルマなので、その子たちの保護者様に少しでも安心して使ってもらうということは大きなテーマでもありましたから。そこが伝わったのかなと思います」
5. お子さんのいるご家庭のニーズに応えました
――林さんは今年1月に発表された新素材「FABTECT」の開発にも携わっていたとか。
林「はい。FABTECT (ファブテクト)とは油汚れに強いHondaの新素材です。『テリヤキハンバーガーのソースをこぼしても汚れや臭いが残らないようなシート素材を作ろう!』をテーマに生まれました(笑)。
従来のシート素材(左)とFABTECT(右)
アレルクリーンプラスは『目で見えない効果』ですが、FABTECTでは『目に見える効果』を達成できたのが嬉しいですね。」
――FABTECT開発の際、アレルクリーンプラスの経験が活きたことはありますか?
林「アレルクリーンプラス開発時のリサーチに加え、今回はお子さんがいるお客様20人ほどにもお話を伺うことができました。そこで浮かび上がってきたのが『お子さんが飲食物で車内を汚してしまう問題』です。FABTECTは、こういったニーズに応えられるのではと期待しています」
――林さん、ありがとうございました!
林さんをはじめ、多くの技術者が試行錯誤を重ねて生み出した「アレルクリーンプラス」。
意外な部署のスタッフの働きにより、カーシートに留まるはずだったこの技術が、意外な形で活用されることになります。
6. 技術を守り、技術を広める
――次は四輪事業知的財産部の森さんにお話を聞ければと思います。
森さんはいつもどのようなお仕事をしているのでしょうか。
森「よろしくお願いします。私は主に知財に関わる仕事をしています。知財とは知的財産のことで、Hondaが開発した技術を特許として登録し守っています。具体的にはHondaの特許技術が他社に無断で使われていないかのチェック。そしてHondaが他社の特許技術を侵害していないかも厳しく監視しています。自分たちの技術を守り、同時にHondaが他社の権利を侵害しないようにすることが私たちの主な役目です」
――今回の「技術の供与」とは真逆のイメージですが…?
森「最近ではHondaが特許を保有する技術を広く使って頂くことも、知財部門の大きな役割になってきています。もちろん勝手に技術を使われては困りますが、きちんと手続きを踏んで頂ければ技術の供与にはお互いにさまざまなメリットがあります。そのため、むしろこちらから『こんな技術がありますが、いかがでしょう』と、営業のような役割をこなすことが増えています」
――今回のアレルクリーンプラスの外部活用は、まさにHondaが特許を持っている技術の供与にあたりますね。
森「優れた技術は守ることも大切ですが、広く使って頂くことで多くの方々のお役に立つことができます。特に今回は大手家具メーカーの内田洋行様に使って頂けるということで、普段はあまりクルマやバイクに馴染みのない人たちにもHondaの技術に触れて頂ける絶好の機会だと捉えています」
7. 絶対に納得させられる自信があった
――ですが、家具メーカーにシートを提案するというのはいわば本職への「逆輸入」の形になると思います。そのあたりで苦労したことはありますか?
森「餅は餅屋という言葉もありますから、社内からも『無理だよ、やめときなよ』という声はありましたね。ですが林さんたちが作ったアレルクリーンプラスは間違いなく高品質で、必ず人のためになる技術ですから。『試してさえもらえれば、絶対に納得させられる』という確信はありました。
そんな中で内田洋行様にテストする機会を頂いたことは非常に幸運でした。技術も無事認めて頂き、今回の外部活用に繋がりました」
林「そこまで信頼してもらえると、技術者としても嬉しいです」
森「Hondaの厳しい試験を潜り抜けてきた素材ですから、間違いはありません。そうでなければ、こんなに自信を持って提案することはできなかったと思います。ただ、『ビタミンカラーが欲しい』と言われたときはさすがに困りました(笑)。クルマのシートですから、どうしても黒やグレー、せいぜいアイボリーといったところで…」
林「こちらとしても今後そういった色も用意したいのですが、1色追加するだけでも大変な量のテストが必要なので…、気長にお待ちください(笑)」
――最後に今後の取り組みについて教えてください。
森「これからもHondaの優れた技術を広めていきたいです。すでにアレルクリーンプラスの他にも、例えばレジェンドの歩行者認識技術を応用し、ヒューマンセンシング技術として企業様に使って頂いているという事例もあります。モビリティとは縁遠い分野にも積極的にHondaの技術を提案していくことで、より多くの方の生活が豊かになればいいですね」
林「新型コロナウイルスの影響で、今まさに人々の価値観が劇的に変わっている真っ最中だと思います。そんな中で生きる人たちにはなにが必要なのか、これからどんなクルマが必要とされるのか。常にそれを考え続けなければいけないなと思っています。どんな時代が来ても、その時々の人たちにとって役に立つもの作りを続けていきたいですね!」
――お二人とも、ありがとうございました!
今回アレルクリーンプラスが使われるのは、内田洋行さんの製品ラインアップの中でも主力のオフィスチェア、ミーティングチェア5種。皆さんのオフィスにもいつかやってくるかもしれません。
Published on 2020.07.30
"オフィス" - Google ニュース
July 30, 2020 at 09:24AM
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クルマのシートがオフィスチェアに変身! 家具の「本職」にも認められた“技術”と“情熱” | Honda - Honda モータースポーツ
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