米カリフォルニア州ベンチュラのモンドズ・ビーチを覆う煙。2017年撮影。海岸の近くを泳ぐイルカやネズミイルカは特に、森林火災の煙を吸い込む危険がある。(PHOTOGRAPH BY MARK RALSTON/AFP, GETTY IMAGES)
森林火災で発生した煙と化学物質によって、海洋哺乳類がどのような影響を受けるかという研究はほとんどない。ただ、2010年のメキシコ湾で起きた原油流出事故を参考に考えると、数年後の海洋哺乳類の健康に深刻な影響がないとは言えないだろう。
2010年、獣医師のカーラ・フィールド氏は米ニューオーリンズで救急隊の一員として、米国史上最悪と言われる原油流出事故が野生生物に与えた影響を目の当たりにした。75万キロリットル超の原油がメキシコ湾に流出。当時、海面に漂う原油を除去するため、油膜を燃やす方法が採られた。しかし、5年後に行われた研究では、化学物質を含む煙を吸い込んだハンドウイルカが重度の肺疾患になったことが分かった。その結果、イルカは感染症にもかかりやすくなり、子の死亡率が高まったことが示唆された。 (参考記事:「イルカの健康被害、原油流出の影響か」)
現在、カリフォルニア州サウサリートの自然保護NPO海洋哺乳類センターで医療ディレクターとして働くフィールド氏は、2万8000平方キロ以上を消失した2020年の破壊的な森林火災でも、同じことが海洋哺乳類に起きるのではないかと懸念している。(参考記事:「「一生に一度」級の危機、米オレゴン州の森林火災」)
森林火災の煙は、主に一酸化炭素、二酸化窒素、多環芳香族炭化水素(PAH)、有害粒子状物質が成分だ。人が吸い込めば、呼吸器疾患、心血管疾患のリスクは高まる。
クジラやイルカといった海洋哺乳類は、海での暮らしに適応した。海は陸よりも大気汚染物質が少ない。それだけに「海洋哺乳類が粒子状物質を吸い込めば、組織が傷つくことが予想されます」とフィールド氏は話す。同氏の予測通りなら、ラッコやシャチなどに深刻な影響をもたらすことになるだろう。
森林火災による煙が海洋哺乳類にもたらす影響は解明されておらず、潜在的な脅威は大きい。フィールド氏は西海岸の科学者たちに、森林火災の影響が及ぶ場所に暮らす海洋哺乳類の健康データを収集してほしいと呼び掛けている。2020年の森林火災シーズン、煙を吸い込んだ海洋哺乳類が海岸に打ち上げられたという報告はないが、まだその可能性はあるとフィールド氏は述べている。
「今こそ基準値をつくるときだと思います。どのような試料を探すべきかを決定し、研究の対象とする種や個体群を明確にすべきです」
解剖学的な「弱点」をもつ海洋哺乳類
フィールド氏によれば、クジラやイルカは解剖学的に、森林火災の煙の悪影響を受けやすいという。噴気孔(人でいう鼻)で大量の空気を出し入れするため、大気中に漂う煙の粒子を吸い込みやすいのだ。
また、陸生動物の場合、副鼻腔(びくう)をはじめとする鼻の構造が物理的なバリアになることで、粒子状物質を吸い込んでも粘液にとらえられ、くしゃみやせきとともに排出されるようになっている。「海洋哺乳類にはこうした構造がなく、粒子状物質が肺に届きやすいのです」とカナダ、ブリティッシュコロンビア州農務局の獣医病理学者スティーブン・ラバーティー氏は説明する。 (参考記事:「森林火災で最大1000頭が死亡、コアラはどうなる?」)
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