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テック企業オフィスの行方 広大なスペース地元に開放? - 日本経済新聞

NIKKEI MJ

少なくともここ10年近く、テクノロジー企業のオフィスは、みながうらやむような場所だった。広々としたオープンスペースで、くつろげるソファや楽しいミーティングルームがあり、オフィスのどこで仕事をしても構わない。昼食時は食べきれないほどの食事が並ぶカフェテリアで過ごす。スポーツクラブなどもあって、日常生活が済ませられるようになっている。感謝祭用の七面鳥までオフィスで買ったと聞いたこともある。

広大で先進的なオフィススペースがコロナ後にどのように活用されるかにも注目だ

広大で先進的なオフィススペースがコロナ後にどのように活用されるかにも注目だ

新しいワークスタイルを主導してきた広大なオフィススペースは、コロナ禍によってどうなっていくのだろうか。テクノロジー企業は率先してリモートワークに寛容な姿勢を見せている。「来夏まで出勤しなくていい」どころか、「永遠に来なくていい」とする企業さえある。

多くのテクノロジー企業のオフィス空間を設計してきたあるデザイン事務所は、コロナ禍になるや否や、オフィス空間改造のためのアイデア集を作っていた。人が交わらないよう入り口からデスクまでの動線を変えたり、デスクの配置を変えたりする。屋外空間をうまく取り込んだり、また受付エリアには消毒室のようなものを設けたりできれば理想的だと言っていた。

実際、噂で聞こえてくるのは広いオープンスペースを細々とパーティションで区切ったり、のびのびしたカフェテリアでのランチの代わりに箱入りの弁当を支給したりしているという話。まるで時代が遡ったかのようだ。

コロナ後のオフィス空間のはっきりした姿はまだ見えないが、ただ興味深い予想は、社員は出勤とリモートを混ぜ合わせた「ハイブリッド」な働き方をするようになり、オフィスもそれに合わせた空間が求められるというものだ。

オフィスはどうしても集まらなければならない共同作業の場所となるので、ミーティングルームの役割が増す。とはいえ、大人数で1つのスクリーンを見つめるという従来型ではなく、一緒にいながら個々のスクリーンを見るという矛盾をはらんだ環境だ。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

オフィスにいる人といない人が、まるで境界がないかのようにつながっていると感じる仕組みを、実現するテクノロジーも求められる。

ビデオ会議をいつもオン状態にしておくのもその1つ。誰がオフィスに来て誰が来ないかのローテーションを管理し、リモートワークと共同作業のハイブリッドな生産性を最大化するソフトも必要だ。オフィス内の人の混み具合を感知し、接触を追跡し、空気の清浄度をモニターするのもテクノロジーの役割だ。

テクノロジー企業のオフィスで現在進行している新しいプロジェクトには期待できる点がある。フェイスブックは住宅やショッピングセンターも盛り込んだ、地元のコミュニティー密着型のエリアを本社近くに計画。長い通勤時間や住宅不足を解決するプロジェクトだったが、意外にも新しいオフィスや働き方のヒントになるかもしれない。

グーグルの新社屋も地元住民が周りを自由に歩ける公園のような計画になっている。社員が自宅で過ごす時間が増える一方で、オフィスは地元に開かれた場所になるのか。そうなればおもしろい。

[日経MJ2020年11月23日付]

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