「やぃワレ!」「おんどれぇ!」――。巻き舌でまくし立てる朝ドラのセリフが、朝のお茶の間に響き渡る。どぎつい口調も多いが「スッキリする」「力強い」とネットで話題だ。大阪弁の中でも、特にパンチの利いた「河内(かわち)弁」の魅力とは。
先月末に始まったNHKの連続テレビ小説「おちょやん」。とりわけ主人公・竹井千代の子ども時代を演じる9歳の子役、毎田暖乃(まいだのの)の演技が際立った。
継母との確執、家族との別れ、女中奉公――。大阪・南河内の貧しい家に生まれた千代の境遇は、昭和の朝ドラ「おしん」のように過酷だ。しかし底抜けに明るくパワフル。だめな父に「あほんだら!」と気合を入れ、底意地の悪い継母には仕返しをたくらむ。悲劇のヒロインにはならず、やられたらやり返す。小柄な体から炸裂(さくれつ)するたくましい演技は、ぼんやりとした視聴者の寝起きの頭にも活を入れてくれる。
威勢の良さが売り 近鉄「いてまえ打線」も
これがもし標準語だったら、印象は違うはず。瓦を一気にたたき割るような響きの河内弁だからこそ、底辺からはい上がる意地を表現できる。
大阪弁といっても、泉州弁や河内弁、古くは商人の街で使われた船場言葉など様々な方言がある。河内弁は大阪府の富田林(とんだばやし)市や八尾市など大阪の南や東の地域の言葉で、ときにはけんか腰のように聞こえることもあるのが特徴。藤井寺球場を本拠地にしていた近鉄バファローズが、やってまえの意味合いがある「いてまえ打線」と呼ばれていたように、威勢の良さが光る。
歌にもなるほどで、有名なのは昭和のヒット曲「河内のオッサンの唄」(ミス花子/1976年)。「もっと飲まんけオンドレ」「どぶ川にはまったらあぶないどワレ」――。河内流人称変化のオンドレ、ワレを連呼する。映画も作られるほど話題になったが、どぎつさから八尾市の市民団体に抗議され、河内弁論争へ発展したこともあった。
平成になると、「南河内ことば辞典 やぃ われ!」(2001年)、「河内弁大辞典やぃ われ!」(03年)が登場した。手がけたのは、大阪・富田林の住民ら。生粋の「カワチアン」や、引っ越してきてカルチャーショックを受けた人たちが公民館の市民講座をきっかけに集まり、「富田林 河内弁研究会」を結成。約3年がかりで編集した。
辞典に載る方言は、戦前から昭…
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