エレノア・リンプレットが、携帯電話のメッセージで最初の山火事警報を受け取ったのは、大晦日の朝のことだった。その時彼女は、人気の休暇先であるニューサウスウェールズ州の南海岸に位置するナラワリーで家族と一緒にクリスマス休暇を過ごしていた。警報の発表後、リンプレットは詳しい情報を求めてテレビをつけたが、数分のうちに停電。携帯電話で消防局が提供する山火事アプリを確認しようとしたが、突如として電波が途切れた。その間、迫りくる炎によって空は血のように赤く染まっていった。
「本当に恐怖を感じましたが、冷静でいようとしていました」。リンプレットの夫と義母は警報が発表される少し前に、近所にある家族の土地の様子を確認するために車で外出していた。「停電が1、2時間続いて電話も使えず、彼らがどこにいるのか分かりませんでした」と彼女は語った。
まもなくして2人は無事に帰宅し、エレノアは胸をなでおろす。その後、リンプレットの義母は古い電池式のラジオを引っ張り出してきて、オーストラリアの公共放送「オーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation)」のローカル局の緊急放送を受信できるようにした。周囲では近所の住民も、家の前の車道に停めた自動車の中で、カーラジオを聞きながら同じような行動をとっていた。
その後の数日間は、まるで現実味がなかったとリンプレットは話す。発電機があるいくつかの店を除いて町全体が停電となり、ガソリンスタンドには行列ができた。人々は懐中電灯や電池、牛乳やパンなどを買い占めていた。店側は決済処理のために、長らく使っていなかった古い手動式のクレジットカード処理機を持ち出す必要があった。停電や通信障害により町のATMも利用できなくなっていた。
「年配者は皆ハッピーでしたよ。電池式の機器を持っていたし、マットレスの下に現金を隠していましたからね」とリンプレットは語った。
オーストラリアに壊滅的な被害をもたらしている森林火災に関する報道のほとんどは、火災の劇的な広がりと火災による損害に焦点が当てられている。焼失面積は1070万ヘクタール以上に及び、少なくとも27人が死亡、10億頭以上の野生動物が死んだとされている。
ブルーマウンテンズにある私たちの家は、焼失する寸前だった。数日前に避難していたため私たちは家におらず、7つの異なる情報源の間を行き来しながら日々を過ごしていた。それらの情報源はすべて電力やインターネット、携帯電話の電波に依存しており、自分たちの街に何が起こっているかを必死になって知ろうとしていた。
電力や情報に運良くアクセスできなかった人も多数おり、多くの人々にとってこの火災の体験は、現代の大災害を描いた映画の始まりに酷似したものとなった。近代的な通信インフラ機能や電力が完全に停止した時、私たちがいかに脆弱であるかがすぐに明らかとなる。
一連の森林火災の間、炎が近づく緊迫した時間の中で地域全体が電力や通信手段から断絶されていた。大晦日のある時点においては、ニューサウスウェールズ州の海外線は177キロにわたって電力も通信機能も喪失し、何万人もの住民や観光客が影響を受けた。ビクトリア州と南オーストラリア州では火災に関連するライフライン機能の停止により、さらに多くの人々が影響を受けている。
障害の影響は深刻だ。特に消火や飲料水に用いる給水ポンプを電力に依存している遠隔地では、森林火災発生時に電力が必要不可欠となる。電力は人々に情報を与え連絡を取り合うための通信機能や放送インフラを支えている。電力がなくては人々はパニック状態となって右往左往し、急速に変化する状況 …
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February 10, 2020 at 04:44AM
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Australia had plans to prevent fire blackouts. They just weren’t ready in time. - MITテクノロジーレビュー
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