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また発生したカリフォルニアの山火事は、気象の複雑なメカニズムによって勢力が拡大している - WIRED.jp

カリフォルニアが、また燃えている。8月の第3週の終わりに州北部全体で異常に激しい雷が発生し、400近い場所で火災が発生した。その多くが、恐ろしいほどの規模の大火災に発展している。

8月21日の朝までに、「SCU複合火災」(SCU Lightning Complex)と名付けられたサンノゼ付近の火災が23万エーカー(約930平方キロメートル)、「LNU複合火災」(LNU Lightning Complex)と名付けられたナパ付近の火災が22万エーカー(約890平方キロメートル)を焼き尽くした。ふたつの火災だけで、計700平方マイル(約1,820平方キロメートル)が焼けたことになる。

同時に発生するいくつもの山火事に対処するために、消防隊は広範囲に散らばることを余儀なくされ、どの現場でも火を抑え込めなくなっている。さらにサンタクルーズでは、「CZU複合火災」(CZU Lightning Complex)と名付けられた火災によって、50,000エーカー(約202平方キロメートル)が焼失した。多くの人々が避難を強いられ、5人が亡くなっている。

熱波と雷のダブルパンチ

この大規模な山火事の根底には、奇妙な気候がある。そもそも8月にカリフォルニアのあちこちで落雷があることは珍しい。今回はトロピカルストーム(熱帯暴風雨)「ファウスト」が8月中旬にメキシコ最北のバハ・カリフォルニア州から北進したことをきっかけに、カリフォルニア州北部に湿気が送り込まれた。

「これほどの雷や稲妻がカリフォルニアで見られること自体が珍しいのです」と、NBCのベイエリア担当気象学者のロブ・マエダは言う。「今回のように350を超える山火事が発生するなんて、非常に不運な条件が重なったとしか言いようにありません」

8月15日と16日の週末には、激しい雷によって多くの山火事が発生した。雷が発生したからといって、必ずしも雨が降るわけではないからだ。それに降雨があったとしても、あまりに高い位置から雨粒が降ってくる場合は、高温低湿の環境では地面に到達する前に蒸発してしまう。

運の悪いことに、雷雨を伴う嵐がカリフォルニア州を通り抜けたとき、現地はすでにかなりの高温に見舞われていた。そこに72時間のうちに州内で11,000回もの雷が発生する。こうして生じた火花を消せるだけの雨は降らなかった。しかも、この嵐は時速35~40マイル(時速約56~64km)という高速で移動していた。

「雨が伴うこともありましたが、速い速度で移動していたことで、火を消せるほどの長時間にわたって降り続くことはありませんでした。熱波に続いて移動が速い雷のダブルパンチにやられたわけです」

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8月16日の落雷レーダー。多数の雷(銀色)が落ちていることがわかる。VIDEO BY ROB MAYEDA/NBC BAY AREA

「奇妙な動きをする火事」が起こる理由

いま、カリフォルニア州は山火事だらけだ。以前から干ばつと熱波に襲われていたこの地では、植物がすっかり乾燥して燃えやすくなっている。さらに8月18日の夜、サンフランシスコのベイエリア一帯では、夜間乾燥現象(Nocturnal Drying Event:NDE)と呼ばれる現象が起きていた。

冷たく湿気の高い海洋性の気層は、通常なら植物が湿度を保つ助けになる。ところが山岳地帯では、そのすぐ上に非常に乾いた気層が形成されるのだ。今回の夜間乾燥現象の場合、夜間の湿度が15パーセントまで下がってしまい、植物をさらに急速に乾燥させる結果となった。枯れた植物なら、たった1時間で乾燥しきってしまう。そして山火事は、燃料が乾いていればいるほど、高熱で燃える。

さらに、山火事を広げる重大な要素である風も、めちゃくちゃだった。「地表近くの風が弱くても、山地の上方には下層ジェット気流が吹いていました」と、サンノゼ州立大学の火災気候研究者で(現地で山火事の調査もしている)クレイグ・クレメンツは言う。これが強風を生じさせ、その強風が地表に降りてきて、突風を起こすのだ。

夜間乾燥現象のせいもあり、すでにコントロール不能になっている山火事と闘う消防隊員たちの周りで、炎は風向の変化に応じてめちゃくちゃな方向に動きまわる。「火事が非常に奇妙な動きをすると消防隊員たちが報告していました」と、クレメンツは言う。「この地域の上方で起きている下層ジェット気流と、夜間にこの地域に入ってくる乾燥した空気が原因だと思われます」

火事が生む竜巻

そのうえ、山火事が独自の気候をつくり出すこともある。そうなると、風の動きもますます変化する。

「山火事があまりにも大きくなると、熱や水分放出によって独自の気候をつくりだすのです」と、国立省庁間調整センターの気候学者ニック・ノースラーは言う。同センターは、山火事との闘いのために米国内のリソースの分配を担当している。

「そうなると、非常に乱気流の起こりやすい環境になります。風は不安定になり、通常より風力も強くなるんです。複雑な環境のなかで大きな火事が起きているわけですから」

キャンプファイヤーを考えてみてほしい。炎が空気を暖めると、空気は煙と燃えさしを巻き上げながら、木の梢の間を上っていく。それでは、このキャンプファイヤーの規模を大きくして、見渡す限りの広さで広がる山火事を想像してみよう。大量の熱い空気が空に吹き上がり、強風を起こし、枝を何キロメートルも先まで吹き飛ばすのだ。

こうなると、火事の周りには気圧の低い地帯が生じる。この空白を埋めるために周りから空気が吹き込んでくると、さらに火災による風が生まれる。「その地帯のどこに火事が起きているかによって複雑な状態になるので、予測しがたいパターンが生まれます」と、ノースラーは言う。

これにより、山火事が炎の竜巻を吐き出し、この世の終わりのような状態になりうる。ちょうど8月15日にタホ湖の北のロイヤルトンで起きた山火事でも、風がぐるぐる回っている状態だった。

「風が回ったり高速でくるくる回転したりすると、循環が始まり、竜巻のようになることもあります」と、クレメンツは言う。このような火のすぐそばの風は、周囲の風に比べて5倍の強さになることもあるという。

「火によって起きた風が山火事を広げている原因ではないかと、わたしたちは推測しています」と、クレメンツは付け加える。「しかし、その力学を予測することは難しいのです」

雷が雷をつくる?

山火事の上方の大気中では、もっと奇妙な現象が起きていることもある。

山火事によって煙が広がると上昇気流が強くなり、粒子が大気中の高い所に運ばれていく。そうして上昇した粒子は凝縮核の役割を果たし、水の分子を吸い寄せて厚い雲をつくる。「こうしてできた雲には十分な厚さがあるので、雷が起き、火災積乱雲になります」と、クレメンツは言う。

今年はじめにオーストラリアで前例がないほどの規模の低木林火災が起きたときも、このような雷雲が多く形成された。心配である点は、カリフォルニアの巨大な森林火災は火災積乱雲を生み出しており、その雲が雨を伴わない雷を起こしていることだ。そのせいでカリフォルニアの山火事は、ここまでひどくなってしまった。

こうした状態になると、雷のエネルギーはいわば“リサイクル”され、さらに多くの火を周辺地帯に引き起こす。「加えて嵐が起きて風が吹くと、火はいろいろな方向に進んでいきます」と、クレメンツは言う。「非常に危険な状態になり、さらに発火する可能性もあります」

発生中のハリケーン「ジュヌヴィエーヴ」が北へ移動すれば、また新しい雷がこの地域に入ってくるだろう[編註:原文初出は8月21日]。ジュヌヴィエーヴは、第1陣の雷を引き起こした低気圧と似たようなルートを移動している。これらの熱帯性低気圧が北西方向に流れていって水温の低い水域に達すると、「熱帯性低気圧はばらばらに分解し始め、嵐の性質を失います」と、気象学者のマエダは言う。「そして条件が揃うとカリフォルニアに入ってきて、雨を伴わない雷を引き起こします」

上の図を見れば明らかだが、驚いたことにカリフォルニアの山林火災は熱帯性低気圧ジュヌヴィエーヴを包み込んでしまった。ぶ厚い煙が米国西部のほとんど全域を覆い、その範囲はカナダにまで達している。薄い煙は、はるばるニューヨークまで達している(上の図の明るい青の部分)。

「カリフォルニアは煙の産地になってしまいました」と、マエダも言う。米国はいま、呼吸器の病気でもある新型コロナウイルスを抑え込むべく闘っているわけだが、山林火災による煙によって呼吸器疾患にかかりやすくなったり、症状が悪化したりする恐れもあるのだ。

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